西陽さす、岡山後楽園。
先日、思い立って岡山の吉備津神社へ行きました。『雨月物語』の「吉備津の釜」に出てくる鳴釜神事を行っている古社です。御釜殿で、ちょうどご神事の準備にやってこられた巫女さん(阿曽女)のおひとりからいろいろとお話もうかがえて、思いがけず長居をしてしまいました。このあたりについては、また今度にでも~。
吉備津神社は岡山市の吉備津にありまして、かなりのどかな地域でありました。そこから岡山市街に戻り、とりあえず県庁のあたりに行ってみて、県立図書館を覗き、てくてく歩いてみました。岡山市街……を行くのは、家族で来た子どもの頃以来、20年ぶりくらいです(^^;)。いつも岡山来て、どこへ行ってたんだろう……(備前とか、備中高松とか、倉敷とかばっかりなんだよ、あんた)。
今回どこへ行ってみようかな~と思いつつ、20年前の茫漠とした記憶をたどると、思い浮かぶのはオリエント美術館やら林原美術館(岡山城や後楽園は、まあ、そこそこといった感じ)。おそらく、亡父の趣味で連れていかれたのでした。20年前の父というと、今の私とそんなに年が変わらないんだなあ、そういえば(^_^;)。
ところで私は、ひとの顔と名前を覚える能力がまったくもって欠如しているのです(本当に覚えられない上に、すぐ忘れてしまいます。もう服が変わるとわからない)。が、その代わりでしょうか、一度行ったことがある場所は忘れないというか、初めての場所でもなんとなく方角がわかるというか、道には迷わないというか、幸いにしてそういう部分はあるようで、今回も「こっち」「多分こっち」と思う方に歩いていくと、市立オリエント美術館にたどりつきました。わーい、入ってみよう(だばだば)。
館の内装は、20年前と同じなのか変わっているのか、よくわかりませんでしたが、オリエンタルな美術品のデザインの格好良さにほれぼれしたり、古さに「すげー」と思ったり、あと、館の規模がほどよく、疲れない程度の広さでいいなあと思いました。ただ、このとき私は、妙に全身が痛くて、肩を触ってみると、ガチガチに凝っていたのですな……。秋になって気温が下がってくると、寒がりの私は、全身がよく凝ってしまうのです。ひどいときには病院で検査してもらって、内臓に異常はなかったので、筋弛緩剤(ミオナール)が処方され、それすら全然効かないという有様でした(ミオナールって、あんまり強くない薬なんだとも思うのですが)。で、今回も肩は痛いし、眼もきつくて、頭がきゅーっとなってしまい、「ぎ、ぎぼぢわるい……」という状態で、館内のトイレに入り、誰もいなかったのでコートを脱いで、肩をぐるぐる回したり、頭を揉みほぐしたり、身体の側面を伸ばしたりしまして、ちょっと楽にはなったのですが、どうにも疲れてしまい、さすがに一服せねばと思い、2階の喫茶室「イヴリク」さんに入ったのでした(長い)。
イヴリクさんは、非常にこぢんまりとした、本当に喫茶「室」という感じの一画で、昼下がりの一服を楽しんでおられるご年配の方が数人おいでました。ちょっとお腹も減っていたので何か食べようとも思いつつ、チーズケーキセットがあったので、それを注文することに。よかった、チーズケーキなら、ケーキだけど好きだ。コーヒーは、「アラビックコーヒー」というのがあったので、それを頼んでみることにしたのですが、私はそれがいかなる代物なのかは知らず、「とりあえず、何かアラビアンなコーヒーなんだろう」という程度に思っていたのですな。
このアラビックコーヒー、店員さんが持ってきてくださったときに説明してくださったのですが、コーヒー豆と一緒に香辛料とお砂糖が入っており、注いでからそれらが沈殿するまで待って、上澄みの部分を飲むといいます。デミタスくらいの小さなカップに入っているのですが、最初ひとくち飲んでみると、まだ沈殿しきっていなかったらしく、ちょっと豆が口に入ってきてしまいました(笑)。しかし、
う~ ま~ い~ ぞ~ !
と、思いました。これは、しょうが? あと、カルダモンとかいうやつかな? チャイに通じる香りがあって、飲んでいるうちにコーヒーの香りが鼻孔に残るような感じです。うまいなあ、これは。レアチーズケーキとも合いますぞ。うみゃいうみゃい。身体もあったまるような気がします。
あ、なんか、凝りが軽くなったかも。(そしてこのあとまた、5時間歩きつづける単純な身体)
おいしかったです~、と、お店の方に、自然にお礼を言いたくなるような味でした。お店の方おふたりも、とても感じのよい方々でした。アラビックコーヒー、どこかでまた飲めるといいなあ~。