ドグラ・マグラ映画版

ドグラ・マグラ [DVD] 先月、日本映画専門チャンネルで、『ドグラ・マグラ』が何度か放送されたので、楽しみにして観ました。夢野久作の長編小説を映画化したもので、88年だったか87年だったか、それくらいの時期の作品です。AmazonでDVDを探して、アフィリエイト用の画像のタグを貼ってみたのですが→ な、何コレ、すげえ~~~~~~なぁ、このパッケージ写真(笑)。桂枝雀師匠演じる正木博士の絵がすごすぎる。この映画、こんな感じではなかったですよ、これほどのゲテモノではなかったですよ(笑)。

 それはともかく映画本編についてなんですが、観る前は、原作があの原作ですから、長い上にとんでもないカオスですから、映画版といっても小説のエッセンスだけを組み合わせたようなモンかもしれん、などと思い、あんまり期待はしていませんでした。下手したら『ドグラ・マグラ』だけじゃなく、他の夢野久作作品のエピソードなんかも盛り込んじゃって、別作品になってたりするかもしれん、とも勝手に思っていました。いえ、そういう映画やドラマ、ありますもんね。なぜか原作を2つ以上挙げているような映像作品。勝手にミックスするなや、と言いたくなるような映像作品。

 なんですが、この映画版『ドグラ・マグラ』、あの原作をよく2時間にまとめられたなとびっくりしてしまうくらい、「とりこぼし感」の少ない、ぎゅっと濃縮還元されたような作品でした。これは監督さんや脚本家さん(ひょっとしたら同じ方だったか?)が、あの原作を読み込んだ上に、再構成できる高い能力を持っていないとできることではないなと、恐ろしくなってしまったほどでした。え~~~~~~~、こんなことできるの~~~~~という。すげえ~~~~~~~~、という感じ。30年前の作品なので、それはもう古さはかなりありますが(60年代の特撮ホラー映画に通じるような)、期待値が低かった分、「思っていた以上にかなりよかった」という感想を持てました。

 しいていえば、自分が持っていた『ドグラ・マグラ』の世界観と、この映画の画面の色味が違っていたかな、ということは思います。この映画の画面の色味は、えーと、何て言ったらいいんでしょうか、ひとことで言うと、結構わかりやすいおどろおどろしさがあるというか、ピンク・紫・朱色の赤系の色に緑がにゅるっと入ってマーブル模様になっているような色彩(?)の画面が割とあって、まあなんかそれが、あまりにもわかりやすい「奇妙さ」の表現だったかなという気がしますが、私のイメージする『ドグラ・マグラ』の世界の色味は結構シンプルで、建物の中全体に西日が差していて、その西日のせいでものとものとの境界さえよくわからないというか、色では判別できないような世界なんです。色じゃなくて、日の当たっているところと影の明暗の差でものを判別できるような世界、というイメージで、日の当たっているところではものが見えづらく、影の中にも何か潜んでいそうで気味が悪く、はっきり見えるものといえば、日の中で舞っているホコリだけ、というそんなイメージを私はなぜか抱いていました。あ、あと、日の中では正木博士の頭も光るんですね。ホコリと正木博士のぴかぴか頭だけがはっきり見える世界みたいな、そんなイメージでした。そこが私のイメージとこの映画は決定的に違っていたので、まあこの映画はすごくよくできていて、原作をぎゅっと濃縮したようなすばらしい映画だけれども、自分の『ドグラ・マグラ』とは違う、他の誰かにとっての『ドグラ・マグラ』の一例としてよくできたすてきな映画だなという、そういう感想を持ちました。

 いつにもまして要領を得ない感想ですみません。もともと自分が、「あらすじ」を書いてある映画レビューは面倒くさくて読み飛ばす質で、そのひとが感じたことをずばっと書いてある映画レビューの方が断然好きなんです。ストーリーにご興味のある方がもしおいでましたら、どこかの映画関係サイトでご覧いただけたらと思います。すいません(笑)。あ、でも、この『ドグラ・マグラ』は、繊細な方だと観たあとに気持ちが悪くなる場合があると聴いたことがありますので、その点はお気をつけください(^-^;)。私はそういう繊細さが欠けているというか、情緒がないというか、むしろ気味が悪いものにワクワクしてしまう人間で、「え、なになに、見して見して」とか思う方なので、上のような感想になっています。ご留意ください。